ほんとうに美味い店(コラム) 第9回 『草喰 なかひがし』


~大地の恵みをいただく~
『草喰 なかひがし』 中東久雄

京都銀閣寺の畔にある「草喰 なかひがし」。
炭火で焼いた肴と山野草、メインにおくどさんで炊いた白いごはんと目刺し、大地の恵みをいただく日本料理店です。
店主は、「美山荘」(摘草料理)の料理長を経て、平成9年「草喰 なかひがし」を開店。山野草を使い、独自の世界で料理する。現在、京都でもっとも予約の取りにくい店の一つです。
店を入ると12席のカウンターの中には、美しい紅がらのおくどさんと「信楽の雲井窯・中川一志郎作」のごはん鍋と炭火の焼台があります。
なかひがしの幕開きは、八寸から始まります。店主みずから盛り付けます。客席の視線は、店主の手元に集まります。やさしい顔の店主ですが、目付きが険しく、料理に集中しています。そして、八寸が手渡されます。そして、八寸の説明「ごゆっくり、お召し上がりくださいませ」と店主。
胸が高鳴る瞬間です。美味しい笑顔がこぼれます。
八寸は品数が多く、自然の恵みでいっぱいです。次は椀、京都らしく白味噌仕立、ほっとする味がします。造りは黄金色に輝く「鯉」。琵琶湖畔、安曇川の清流育ち、鯛もぐじも敵わないおいしさです。なかひがしでは、四季の野菜を薬味に、一年を通じて鯉の造りが味わえます。そして、炭火で焼かれた魚、野菜、きのこ、炊き合わせ、小鉢、からすみをのせたアルデンテのごはんなどが、ごはんの前に味わえます。
そして、いよいよメインディッシュの「白いごはん」。雲井窯のごはん鍋で炊かれたごはんはふっくら限りなく優しい味です。目刺しと自家製の漬物が良く合います。なかひがしの美味しいの原点は、「母のごはん」だそうです。そして、「野菜の声を聞く」自然を料理しようと思ったら、自分が自然と一体にならないと。
山里で産まれ育った中東さんには、極当り前の事。山と語り、川に耳を澄まし、遊ぶ子供の頃の思い出が今の料理に生かされています。
みなさんもぜひ心休まる大地の恵みをいただきに京都、なかひがしに出かけてみては。


『草喰 なかひがし』
京都市左京区浄土寺石橋町32-3
TEL 075-752-3500
昼 12:00 ~ 14:00 4,000円~(コースのみ)
夜 18:00 ~ 21:00 8,000円~(コースのみ)
※要予約(たいへん取りづらいです)