蔵の産地再発見 『黒楽御飯鍋 ~雲井窯 9代目 中川一辺陶』 滋賀県甲賀郡信楽町

世界で一番おいしいものは何でしょう?
私は、炊きたてのごはんと答えるでしょう。
そして、ごはんを炊く道具は?雲井窯の御飯鍋と答えるでしょう。
今回は、広島より約3時間、山深い里にある、滋賀県信楽の雲井窯へやって参りました。
9代目の中川一辺陶さんが笑顔で迎えてくださいました。中川さんの幼い頃の遊び道具といえば、粘土。父の見よう見まねで土鍋を作ったそうです。そして、その鍋で前の畑でとれた野菜を煮て食べたそうです。
20才を過ぎてから、料理屋さんのお鍋を作り始め、挑戦の毎日が始まりました。
最初は、注文どおりの作品が出来ず、焼き物の技術は、父、大学の先生を訪ねたり、資料を調べたりしながら、実験を繰り返していました。
どうしても、出来ず盆も正月もなく、出口の見えない毎日から逃げ出したいと幾度も思ったそうです。
しかし、完成したお鍋で出される料理を味わう、産みの苦しみを忘れさせ次へ向かう勇気を中川さんにくれたそうです。
そして、蔵で使っております、御飯鍋も挑戦と創造から生まれた作品だそうです。
「私は生きているお鍋を作っています」と中川さん。土は1年間寝かせます。土を練る水にしても塩素消毒した水道水では駄目。無数の微生物がいる「生きた水」を使って練る。そうして初めて出来る粘りが私のお鍋には欠かせません。私が楽しみながら造形し、わくわくしながら、窯から出したお鍋は、次に料理する「楽しみ」とともにその力を発揮してくれます。「まるで生き物をように使い込むほどに、その気になってくれます。そして最高の御飯が炊き上がります。「おいしいごはんは生きています。」
中川さんの作品は、四百年の伝統と懐石料理の文化を守る名料亭、京都「瓢亭」をはじめ、美山荘、菊乃井、なだ万などの名料亭。とうや湖サミットでも、世界のVIPをもてなしたそうです。
1時間にわたり、お話をさせていただき、大変感謝しております。勉強になりました。
私は、中川さんの御飯鍋をいつまでも大切にそして、挑戦と創造を忘れずに料理に取組みたいと思います。ありがとうございました。